F.C.C. TSR Honda Franceの藤井正和総監督、髙橋裕紀採用を発表。髙橋は来季全日本とダブルエントリーになる模様

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取材会後半、F.C.C. TSR Honda Franceの藤井正和総監督より、新型コロナウイルス禍のなか、孤立を感じながらの戦いとなった世界耐久選手権(EWC)2019-2020のシーズンと、その中で8/29-30のル・マン24hではすべてがうまくいき優勝できたことが報告された。

司会「それでは皆様お待たせいたしました。只今より、2021年シーズン参戦体制について藤井さんから発表していただきたいと思います。よろしくお願いいたします」

藤井「はい。今年取れなかったチャンピオンを狙います。もちろんマシンは、このCBR1000RR-Rです。さらに、細かいところを煮詰めて、まだ不安で満足できてないところですね、このオフの間に徹底的に煮詰めます。

それからどうするんだ? と言うと、世界で一番走る、テストをするチームになります。東西で言うと、我々は日本がベースなので、ヨーロッパで走るという事はなかなか思う通り行きませんでした。しかし今、西のヨーロッパにも拠点がありますので、この西の拠点と東(日本)の拠点をうまく活用し、東西で徹底的に走り込んで、やれることを行い進めていこうと決めてます。

具体的に言うと、テスト計画が、多分(現在住居としているスペイン・バルセロナに)帰るころには出てきてると思うんですが、2月、3月にはヨーロッパ、特にスペインの南の方は割と暖かいんですね、20°C切るようなことはあんまり無いです、だから向こうで徹底的に走りこんで、(レース)実走に近いくらいの距離まで伸ばして確認しようと思ってますし、東は日本ですね。こっちはこれから寒くなるまでの間に、確認及び決められることは徹底的に行っていこうと、そういうチーム編成を組みました。

この話していいんですかね? (ホンダ関係者の了解を得て)日本人のライダーと契約をし、今までどおりのライダーのジョシュ・フック(オーストラリア)とマイク・ディ・メリオ(フランス)を向こうで採用し、こっちはですね、そこに手島雄介監督はいらっしゃいますが、手島さんをライダーにはしません(場内から小笑)。

髙橋裕紀さんと契約しました(場内から、「オッーという驚きの声」)。

で、この間のレース、私、見に行ってたんですが、まあ開いた口が塞がらなかったですね、チャンピオン獲って一緒にここで並ぼうと、思ってたんですよ。そしたらあのスタートしてね、ケツじゃないですか…。で、もう思わずですね、どうするのかなと思うぐらいの格好でしたが、見事追い上げてこうやって一緒に並べることになったので、まあいいかなと思ってまして、先ほど言った計画を実行しながら、来年の目的、目標に向けてしっかり取り組んでいこうと思って、今日発表させていただきます。どうぞよろしくお願いします」

司会「それではライダーを呼んでいただけますでしょうか?」

藤井「はい、じゃあ、裕紀」

(会場前方左手のドアが開き、日本郵便HondaDream TPからF.C.C. TSR Honda Franceのチームウェアに着替えた髙橋裕紀選手入場。場内から拍手が起きる。藤井総監督もウィンドブレーカーを脱ぎ、髙橋選手と同じチームウェアになって「おめでとう」と言いながら手を差し伸べた。髙橋選手が「ありがとうございます」と手を握り返す。F.C.C.のロゴを配したチームフラッグを前に両者が並び、再度握手をしての撮影会が行われる。

司会「撮影よろしいですか? はい、それでは藤井監督、髙橋裕紀選手、お座りください。来シーズン新たにF.C.C. TSR Honda FranceからEWCに参戦いたします高橋裕紀選手ですが、決め手と言いますか、どういうところで髙橋選手を採用しようと考えたんでしょうか?」

藤井「住所が一緒なんですね、近所なので(会場から笑)。ちょっと冗談もあるんですが、事実もあるんです。(今年8月末に開催された)ル・マンに行くまでに、最終確認でテストを鈴鹿でしました。その時ですね、日本人のライダーで乗ってもらいたいと思う人を含めて、実機の確認をしたかったんです。で、その時に、裕紀選手に乗ってもらってまして、実際深い煮詰めまでするといった段階じゃなかったんですが、俗に言うコンパっていうのか、お見合いというのかですね、まあそんなもんですよ、一瞬の話しで。でも、なんだろう、縁とか運命って僕はね、そん時に決まると思うんですよ。

それを実感できたし、我々としては、さっき言った野望を成し遂げるために、他所がやってないこと、世界一っていうのは、あのHRCにも負けちゃダメなんですよ、それを成し得ようと思ったら、さっきの地球を丸くして、自分のものにすると、これを実現するために東西って言ったんですね。

で、なんて言ったって、近くに住んでるんですから、彼が朝練習してるのを僕は知っているんですよ、同じ町内会でその音が聞こえてくる。そういう場をですね、これからは鈴鹿サーキットやいろいろなところを利用して、この(CBR)1000(RR-R EWC仕様)のバイクを使ってもらって、やれる組み合わせだなと。

なおかつチャンピオンを獲るためには、ライダー、マシン、チームの三角形を最大的に効率よく大きくしなきゃいけない。で、ライダーとしての資質はもう良く知っているぐらい充分なので、まあ、彼と、えープロポーズしましてですね、話をしてきて、興味頂きました」

司会「ありがとうございます。それでは先ほどまでの赤いユニフォームからから青いユニフォームに変わりました高橋裕紀選手から一言頂けますでしょうか?」

髙橋「MoToGPの経験させていただいて、昨年はワールドスーパーバイクにも挑戦して来て、正直の僕の小さい頃からの目標は世界チャンピオンっていうのは変わりなく、例えばMoToGPでも、正直ワールドスーパーバイクでも、もう現実的に、不可能と言ってはいけないんですけど、難しくて、新たな今年からの勝負の年というところで、全日本で先ほども言いました日本郵便HondaDreamに移籍して、今後の日本人が世界チャンピオンを獲れるように自分の出来ることをしようと考えていました。

そんな矢先に、藤井さんからまさかのそういうお言葉を頂いて、最初はちょっと悩んだんですが、でも、ここ、このチームには現実的に世界チャンピオンというのが見えまして、『あっ、自分の人生の中で本当にラストチャンス』ではないですけど、『世界チャンピオンになれる可能性…』、それも自分の努力次第だと思うんですけど『あるなっ』という所から、ライダーとして、そうやって声をかけてもらえた、その元チャンピオンチーム、今年もチャンピオン争いをしているチームに、声をかけていただいたというのはすごく嬉しいことでして、(新しいチャレンジを始めるにあたり)その他のいろんな問題がありましたけれども、皆さんの本当にご好意で、こういう風に決まりまして嬉しく思っています。

あと、僕以外のライダーふたりは、もちろん世界チャンピオンになっている2人ですので、正直、本当に自分が足を引っ張らないで、むしろチームに貢献できるように精一杯努力して『来年は、世界チャンピオンというものになってみたい』と本当に思っておりますので、是非応援よろしくお願いします」

司会「はい、ありがとうございます。さて、気になるところですが、全日本ST1000クラスのチャンピオンであり、ディフェンディングチャンピオンとして、髙橋選手は来シーズン全日本ロードレースの方はどうされるのか? その辺の所をお聞かせ頂けますでしょうか?」

髙橋「(取材会場後方にいた手島監督に視線を移し)あのマイクもう一本、(手島)監督の方に(お願いします)」

藤井「(手島監督に)お前も(前方に)来たらいいんじゃないか?」

手島「いいんですか? あのー、藤井さんは僕の師匠でもありますから。すみません、お邪魔します(と言いながら前方の髙橋選手の隣に来る)。改めまして手島です。

全日本を含めた質問なんですけども、今年チャンピオンを獲得して日本郵便さん、各スポンサーさん、ホンダさんにも、もちろん来年の継続参戦ということは検討して、今活動しています。ただ現段階で決定ではないので、そこは確約できないんですけども、もちろん 来年は世界チャンピオンを目指すとともに全日本チャンピオンを目指して出していただく体制づくりというのを、今進めています」

(会場内の記者から)「ダブルエントリー方向ですか?」

手島「そうですね、そうなります」

司会「ありがとうございます。多分、(本日取材会に)参加された皆さんが一番気になるところかと思いますが…。最後になりますが、改めまして、藤井総監督から来シーズンに向けた意気込みを聞かせください」

藤井「はい、こうやって並んでいるのが意思表示であり決意表明です。来年ここにチャンピオンになって返ってきます。皆さんまた会いましょう」(会場内から盛大な拍手)

司会「ありがとうございます。それでは髙橋裕紀選手、ファンの皆様にメッセージお願いいたします」

髙橋「今、藤井総監督からも、『来年ここで』という言葉がありましたとおり、有言実行できるように精一杯頑張ります。よろしくお願いいたします」(会場内から拍手)

司会「ありがとうございました。本日はここで終了させていただきます」

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CBR1000RR-Rのポテンシャルをいち早く見抜き、この新型マシンを投入して今年のル・マン24hを制覇。来季はチャンピオン奪還のためより強力な布陣を敷くことになった。

写真/原 富治雄 まとめ/古谷重治

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