X-ADVに乗ってきた

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ツーリングで高速道路を走行していると後方からホンダ・レジェンドが追いかけきた。『気のせいか』とも思ったが、念のため次のサービスエリアに入ることにした。SA入り口でウインカーを点滅させ進入路に入る。するとそのレジェンドもウインカーを出して付いてくるではないか。『これは何かある』。バイクを停車させると、クルマを停めたドライバーがバイク駐車場に向かってきた。文句があるなら受けて立とうと一瞬身構えたが、よく見るとドライバーの顔がニコニコしている。『はて、知り合いではなさそうだが…』。

「すみません。このX-ADV、発表された時から気になっていまして。ずいぶん速いですね」と話しかけてきた。その後も念入りに眺め回した後で「やっぱり買おう」とつぶやくと、僕に礼を言って自分のクルマに戻っていった。どうやら、高速道路走行時の見栄えや動力性能を確認して納得したらしい。

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イタリアホンダがデザインに強烈な主張を盛り込んできた。それだけにスタイリングには好みが別れるだろう。それほど強いアピールを放ち続ける。デザインのこだわりはホイールにも現れる。通常ならキャストホイールで済ませるところを、チューブレスタイヤを使うための新設計のスポークホイールを採用している。機能、コスト最優先だけでないこともこのバイクがX-ADVである所以である。

このスタイリング、僕はかなりカッコイイと思っている。気に入り方は、ホンダ・レジェンドのあのドライバーと似ているのかもしれない。

白色点灯のヘッドライト、2本ラインのテールランプもよくデザインされている。X-ADVを好きな人の中にはこの照明デザインを好んでいる人もいるはずだ。こういったところが、イタリアデザインの心憎さだ。

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今回試乗した車体カラーは年初に追加発表された「マットアーマードグリーンメタリック」色だった。「マットビュレットシルバー」色より30,000円高(税抜き)ではあるが、これまたとても素晴らしい塗装が施されていた。

 

X-ADVの前身はインライン2気筒のNCシリーズだ。乗りやすさ、扱いやすさのコンセプトを引き継ぎながらオフロードを走れるスクーターとして思い切ったデザインで登場させたのだ。クルマでいえばスポーツ・ユーティリティー・ビークル、つまりSUVだ。別荘に出かけるのに、最後の工程だけデコボコ道があり行けなかったところも、これなら行ける。

六千回転強/分でピークパワーを迎える中低速向きエンジンは、十分なトルクがあり穏やかな特性で扱いやすい。そして、ロングストロークのエンジンはナローにまとまっている。X-ADVと相性がいい。

高速道路での快適性もいい。好みで5段階に高さと角度を調整できるウィンドプロテクターしかり、風を楽しむ事もできるし遮断する事も可能だ。ホンダ・レジェンドのドライバーを唸らせる動力性能も有している。

バイクは収納もバカにならない。NCシリーズは普通燃料タンクのある場所にラゲッジボックスがあり、使い勝手が良かったがここは同じコンセプトが生きている。X-ADVにもフルフェィスヘルメットも収納可能なシート下ボックスが用意されている。

デザインを優先しながらもツアラーとしての機能が備わっていることは高く評価できる。燃費も750ccながら通常30km/ℓ以上と悪くない。

晩秋に会津若松から南下して川治温泉から金精トンネル抜けて沼田に出るルートでツーリングに出かけた。紅葉を眺めながらの楽しい走行が一変したのは金精トンネルを抜けた時だった。そこは一面雪の世界だったのだ。進むのか、引き返すのか、逡巡する。思い切って進むことにした。決断の理由はX-ADVの性能によるところが大きい。DCTを装備しているX-ADVは、左レバーを握ればリアブレーキが効く。両足で車体をしっかりホールドしながらの極低速走行が可能だ。低重心もありがたかった。油断ならない状況にも関わらず転倒することなく約20km程の凍りついたワインディングロードを下り切ることができた。

X-ADVの価格はこのマットアーマードグリーンメタリックなら1,296,900円(消費税込み)。安い買い物ではない。しかし、これしか無いデザインとして大きい価値を持つ。ユーザーの個性を主張するまたとないアイテムになるだろう。

週末にツーリングに出かけるとX-ADVをよく見かけるようになってきた。おしゃれなライダーが多い。もともと目立つスタイリングというのもあるが、実は乗りやすいので稼働率が高いのではないかとも思う。今後、150ccのX-ADVが登場する。750cc版を継承して、個性あるデザインを持ちながらさらに扱いやすいバイクになるだろう。

文:モリ ヒサシ  撮影:原 富治雄

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Honda X-ADV  Specifications
車名・型式:ホンダ・2BL-RC95
全長(mm: 2,230
全幅(mm): 910
全高(mm): 1,345
軸距(mm): 1,580
最低地上高(mm): 135
シート高(mm): 790
車両重量(kg): 238
乗車定員(人): 2
最小回転半径(m): 2.8
エンジン型式: RC88E
エンジン種類: 水冷4ストロークOHC 4バルブ直列2気筒
総排気量(): 745
内径×行程(mm): 77.0×80.0
圧縮比: 10.7
最高出力(kW[PS]/rpm:  40[54]/6,250
最大トルク(Nm[kgfm]/rpm): 68[6.9]/4,750
燃料消費率(km/L):40.060km/h定地走行テスト値・2名乗車時)
27.0(WMTC
モード値・クラス3-2・1名乗車時)
燃料供給装置形式: 電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
使用燃料種類: 無鉛ガソリン
始動方式: セルフ式
点火装置形式: フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式: 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L): 13
クラッチ形式: 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式: 電子式6段変速(DCT
変速比 1速: 2.666 2速: 1.904 3速: 1.454 4速: 1.200 5速: 1.033 6速: 0.837
減速比(1/2次): 1.921/2.235
キャスター角(度): 27°00′
トレール長(mm): 104
タイヤ 前: 120/70R17M/C 58H
     後: 160/60R15M/C 67H
ブレーキ形式 前: 油圧式ダブルディスク
          後: 油圧式ディスク
懸架方式 前: テレスコピック式
       後: スイングアーム式 (プロリンク)
フレーム形式: ダイヤモンド

車体色:マットアーマードグリーンメタリック

メーカー希望小売価格 ¥1,296,900(消費税込み)

製品詳細:https://www.honda.co.jp/X-ADV/

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