Honda CRF450Lに乗ってみた

 

Honda史上、最も高次元でオフロード性能に特化したデュアルパーパス。久々に、思い切り振り切ったバイクに出会った。国内4メーカーが、Honda が、これほど思い切ったバイクを市場に投入した例は少ない。最も高次元でオフロード性能に特化した公道走行可能なモデルではないだろうか。

CRF450Lは、モトクロス競技専用車「CRF450R」の70%近いパーツを採用し、公道での走行に必要な保安部品などを装備して、コンペティションモデルのポテンシャルを体感する事が出来る本格オフロードモデル。

国内の様々な規制をクリアして、それでもなお、オフロード走行性能を追求した結果が、こうなった、と言うようなモデルでもある。

久々に、わくわく、ドキドキするバイクとの出会いだった。一見して、CRF450RやCRF450RXとは異なるパーツや装備を施して国内でリーガルに走らせるために、作る側がとても苦労をして生み出したバイクであることがわかる。

それにしても、シュッと背が高く、スリムなプロポーションで格好良い。シンプルでミニマムに性能や特性を追求したモデルは流石に美しい。ただし、乗る側に、少しばかりの覚悟と緊張感を持つことが要求されるようにも思える。

競技モデルのCRF450RやCRF450RXに乗ったことがあるライダーなら、問題ないのだろうが、そうでないライダーはおいそれと乗れないような雰囲気をまとっている。とは言え、895mmのシート高も高身長のライダーであったら、普通に乗れるサイズであり、逆にスリムな車体の軽さ?に、扱いやすいとすら思うのではないだろうか。

エンジンもスターターボタンで簡単に目覚めるし、クラッチも当たり前に軽いし、ミッションのタッチも素晴らしい。スタートは容易に出来る。が、スロットルを開けた途端に、この国内専用の動力性能を与えられたCRF450Lは、予想外の低速トルクで、瞬時に車体が呼応する。最高出力18kW/7,500rpm、最大トルクは32N・m/3,500rpmと控えめに設定されたエンジンは、実は低速域では力持ちなのだ。131Kgの車体をぐいぐいと加速させるに十分な動力性能を持ち合わせている。そのまま、加速を続ければ、高速道路でも巡航できる速度域まで楽に到達できるし、ワインディングや街乗りでも乗りやすいエンジンだとも言える。

ハンドリングも運動性と安定性のバランス点を上手く見つけ出してあって、低速から軽快でかつ直進安定性も保たれている。

特筆すべきは、前後のサスペンションである。ナンバー付きにこんなサスを奢ってしまうのかと、思うくらいのレベルで、動きはもちろん、設定も申し分ない。ハンドリングと相まって、もう少し、こうしたいとか、色々と考えしまうくらいの構成になっている、競技車両と基本的には同様のパーツでセッティング違いと言うことなのだ。

余談だが、競技車両と70%の部品を共用するということは、競技車両にも様々な意味で貢献していると言うことでもある。

さて、軽く、乗りやすく、動力性能も十分で、と、良いことづくしのように思えるのだが、大きな前提がある。あくまで、競技車両に比較してだということだ。いわゆるデュアルパーパスモデルしか乗ったことがない人には、シートは高いと感じられるだろうし、いきなりの加速にも驚くことになるだろう。

ある程度の速度なら安定している操縦安定性も、低速では軽すぎると感じられるかもしれない。

つまりは、誰にでも乗りやすいバイクではないと言うことである。経験や知識や一定のライディングスキルを要求されるモデルである。

競技車両に比べれば、振動や騒音も驚くほど巧みに抑えられてはいても、大多数のナンバー付きのモデルにはかなわない。快適性はどこにあるのか、とか考え出すとつらくなる。

ただ、繰り返すと、乗れる人に単純にとても楽しいバイクの筆頭ではある。全身の7割が競技車両なのだから。

車両価格も1,296,000円と高価である。ただ、競技車両が100万円近いのだから公道をきちんと走れるための装備が30万円かかったと考えれば納得の価格でもある。

このバイクを乗れる人、乗ろうと思う人も幸せだと思える。乗りこなす喜びや、もっと自分好みにして行こうとか考える楽しみを沢山味わうことができるだとうからだ。

僕にとっては、楽しく、突っ込みどころ満載と言ったモデルである。素材が大いに感性を刺激してくるだけに、まず、あれをこうして、そこもそうして…など、想いは際限なく広がる。

久々、Hondaが思い切り振り切ったモデルは決して万人向けではない。そこも楽しい一台だった。

モリヒサシ

Honda CRF450L  Specifications
車名・型式:ホンダ・2BL-PD11
全長(mm): 2,280
全幅(mm): 825
全高(mm): 1,240
軸距(mm): 1,500
最低地上高(mm): 299
シート高(mm): 895
車両重量(kg): 131
乗車定員(人): 1
最小回転半径(m): 2.4
エンジン型式: PD11E
エンジン種類: 水冷4ストロークOHC (ユニカム)4バルブ単気筒
総排気量(㎤): 449
内径×行程(mm): 96.0×62.1
圧縮比: 12.0
最高出力(kW[PS]/rpm):  18[21]/7,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm): 32[3.3]/3,500
燃料消費率(km/L):31.0(60km/h定地走行テスト値・1名乗車時)
25.7(WMTCモード値・クラス2・1名乗車時)
燃料供給装置形式: 電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
使用燃料種類: 無鉛プレミアム
始動方式: セルフ式
点火装置形式: DC-CDI式
潤滑方式: 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L): 7.6
クラッチ形式: 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式: 常時噛合式6段リターン
変速比 1速: 2.357
2速: 1.705
3速: 1.300
4速: 1.09
5速: 0.916
6速: 0.793
減速比(1次/2次): 2.357/3.923
キャスター角(度): 29°30′
トレール長(mm): 127
タイヤ 前: 80/100-21M/C 51P
後: 120/80-18M/C 62P
ブレーキ形式 前: 油圧式ディスク
後: 油圧式ディスク
懸架方式 前: テレスコピック式 (倒立サス)
後: スイングアーム式 (プロリンク)
フレーム形式: セミダブルクレードル

メーカー希望小売価格 CRF450L ¥1,296,000(消費税込み)

製品詳細:www.honda.co.jp/CRF450L/

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