HAWK11、富士五湖ツーリングインプレッション

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梅雨の最中とはいうものの、天気予報は昼前から晴れ間が覗くことを報じています。都内から中央高速を使い、富士五湖周辺へのツーリングに出かけることにしました。バイクは929日(木)に発売される「HAWK 11(ホーク イレブン)」です。

車体デザインは、ロケットカウルに代表されるカフェレーサーを体現しています。低く長いスタイリングは独特の存在感を醸し出しています。見る角度によりコンパクトに見えたり、スタイリッシュにも見えます。

車体色は「パールホークスアイブルー」と「グラファイトブラック」の2タイプがありますが、今回の試乗車は「グラファイトブラック」です。バイクの持つ雰囲気を壊さないように、ヘルメットやライディングウェアも同系色を選びました。

またがった印象は、例えば長いホイールベースが特徴だった’70年代前半のドカティ イモラに乗ったような気がしました。妙に懐かしい大昔のスーパースポーツ的なまたがり感です。

高速道路に上がり、加速してみるとその速さに驚きました。モデルコンセプトは「速くない、でも少し速い」と伺っていたので、どこか見くびっていたところがあったのかもしれません。

エンジンは270度位相クランクと、コンパクトなユニカムバルブトレイン機構を採用した1,082cm³水冷4ストロークOHC4バルブ直列2気筒です。調べてみると同じエンジンを搭載し、同じ出力、トルクのCRF1100MT)より車両重量がマイナス26kgNT1100よりマイナス34kg、同排気量の4気筒だったCB1100よりほぼ40kgも軽いので遅いわけがありません。

HAWK11の車両重量は214kgです。パワーウェイトレシオ( kg/PS)を比較してみると

CB1100    2.80kg/PS(車両重量:252kg、最高出力:90PS
CB1300    2.35kg/PS
(車両重量:266kg、最高出力:113PS

に対し、

HAWK11は  2.09kg/PS(車両重量:214kg、最高出力:102PS)です。

どうりで速いはずです(小数点第3位以下は切り捨てています)。

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2,000 rpmも回っていればスロットルグリップをひねるだけで力強く加速します。ただ、いろいろな回転域から加速を試みるうちに4,500rpmより上の回転をキープするとHAWK11を一番楽しめることが分かって来ました。

HAWK11は車体が低い分、ホイールストロークは長くありませんが乗り心地は悪くありません。外観を見る限り、ショートストロークで硬めのサスという印象ですが、そんなことはありませんでした。ツアラーのNT1100と比べればそこまでの快適さはないものの、高速走行でも路面からの突き上げもほどほどに吸収してくれます。このため安心して気持ちよくスロットルを開けていけます。

ただし、6速で100km/hをキープすると回転数は3,200 rpmです。各ギアポジションで4,500rpm以上を楽しむには専用な場所が必要です。

談合坂下りSAでの水分補給の休憩を挟み、大月JCT経由で河口湖ICまで快適に走って来ました。ここからは国道139号線を左回りで進みます。まず、目指したのが道の駅「なるさわ」先の富士宮鳴沢線です。「河口湖消防署西部出張所」を左折します。

この道は、青木ヶ原樹海を通り抜ける県道で、あたかも森林浴をしているようなツーリングを楽しめます。特にクルマの少ない平日はお薦めです。オートバイの振動や排気音を、木漏れ日の中で堪能することができます。NT1100と共用のサイレンサーは、低音の効いた排気サウンドを響かせています。

富士宮鳴沢線を抜けて139号線を今度は右回りに北上します。本栖湖キャンプ場手前の駐車場に到着した時には雲の隙間から太陽が顔を覗かせ始めました。対岸の西側の湖面は陽光に照らされています。

その光に誘われ本栖湖畔線で湖を一周してみることにしました。道が日陰に入ると路面が濡れています。先ほどまで雨が降っていたのでしょう、そして、強風が吹き荒れていたようで、落ち葉だけでなく木の枝が路面のあちこちに落ちています。ライダーにとって嫌なシチュエーションです。

こんな時の力強い味方が、Honda セレクタブル トルク コントロール(T)です。アクセルを開けた状態でのリアタイヤのスリップを緩和し、駆動力を抑制します。また、エンジン出力(P)やエンジンブレーキ(EB)のレベルを組み合わせることにより安心感のある走行が可能です。これらのレベルはメーター内に左からP、T、EBの順に常時表示されています。

本栖湖周回が終わる頃には太陽が完全に出て気温が上がって来ました。メッシュのライディングウェアが気持ちいい風を取り込んでくれています。早朝から活動していたのでお腹も空いて来ました。バイクの見えるレストランで、早めのランチと、美味しいコーヒーを飲むことにしましょう。

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帰路は、思い立って中央高速を相模湖ICで降りることにしました。HAWK11に乗ったからでしょう、久しぶりに甲州街道の大弛(おおだるみ)峠を走りたくなったのです。大弛峠は首都圏ではメジャーなワインディングロードです。距離は長くありませんが、高低差のある大小さまざまなコーナーが続きます。HAWK11は、ひたすら真っ直ぐ走るのが得意! なバイクです。高速域同様に低速域でも頑固なアンダーステアのままコーナーに入っていきます。アンダーだから、アクセルを開けながら曲がることが怖くありません。低速から高速まで、アクセルを開けながら曲がる楽しみがあります。欲を言えばもう少しピッチングしてくれたらさらに曲がりやすいかもしれません。でも、こんなにフロントタイヤに依存しないホンダのロードスポーツモデルは珍しいものです。

 コーナリング中のライディングポジションも納得のいくものでした。専用設計されたステップブラケットが秀逸です。ステップ周りの処理がよく、くるぶしでバイクをぴたりと押さえることができます。相模湖から高尾山口まで、時間を忘れて瞬く間に走り終えていました。

 300km強の半日ツーリングを終えると身体が少し疲労していました。このところ前傾ポジションに慣れていなかったこともあります。シートのいい位置に座るとハンドルもそれほど遠く感じなかったのですが…。総じて乗りやすいバイクではあります。ただし、小柄なライダーにはちょっときつい車体サイズかもしれません。14ℓの燃料タンク容量は小さいと思いました。リザーブとして3ℓほど確保していると思われますが、走行220kmで給油警告灯が点灯しました。ひとりで思いっきり走るなら、せめて300kmの航続距離は確保したいところです。また、HAWK11にデュアル クラッチ トランスミッション(DCT)車の設定はありませんが、ぜひ搭載して欲しかったところです。性能が著しく向上した今のDCTならシフト操作を気遣うことなくコーナリングに没頭できそうな気がします。

 いいところも要望も感じた半日ツーリングですが、ゆっくり思い返しているうちに「Ego-tripper」という言葉が浮かんできました。’80年のケルンショーで発表され大反響となったターゲットデザインによるGSX1100S、代表のハンス・ムートがその刀をデザインした際のコンセプトとして使ったのがこの言葉です。独り天狗と訳されていますが、当時は『それほど長距離じゃない道をひとりで移動して楽しむ』的な意味で使われた言葉でした。このHAWK11にはそんな存在感と意味を感じました。共感するターゲットユーザーもいるはずです。年齢や経験に拘らず、この個性が好きな人に乗っていただきたいバイクです。

Photos:原 富治雄
Touring Impression:モリ ヒサシ

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FRP製のロケットカウルが強調されているHAWK11。独特の雰囲気を醸(かも)し出すスタイルです

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フロントフェンダー、ロケットカウル、サイドカバーをシルバーとした2色の配色。水平方向のラインが強調され、全体をより低く長く感じさせます(撮影車両のタイプはグラファイトブラックです)

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車体は、アフリカツインをオンロード向けに適合させた「NT1100」のフレームと足まわりをベースに、よりワインディングでの走りを楽しめるディメンションに再構成されています。前後のサスペンションセッティングを変更し、キャスター角をNT1100比で1.5(°アフリカツイン比2.5°)立てた25°に設定。併せてライディングポジションを前傾姿勢としています。上記に伴いトップブリッジ、セパレートハンドル、ミラー構成、ステップブラケットなどを変更しています

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スポーティーな走りと心地よい鼓動感を両立した 1,082cm³水冷直列2気筒エンジン。加速は思った以上に強烈です

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エンジンは豊かなトルクとパルス感を生み出す270度位相クランク。6速マニュアルトランスミッションやダイレクトなスロットルレスポンスに寄与する「スロットルバイワイヤシステム(TBW)」が採用されています

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フロントはショーワ(日立Astemo株式会社)製SFF-BP倒立フロントフォーク。ブレーキはラジアルマウントされた対向ピストン4ポッドキャリパーとΦ310mmのダブルディスク。フロントブレーキのマスターシリンダーには、ラジアルタイプを採用し、高い制動効率とコントロール性が追求されています。さらにABSも装備しています

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リアにはシングルポッドキャリパーとΦ256mmのシングルディスクが採用されています。バンク角を確保するためにサイレンサーの位置が上方に配置されています

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リアサスペンションはアルミ製スイングアームにプロリンクと分離加圧式ダンパーを組み合わせています。ダイヤル式プリロードアジャスターも装備しています

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ウインカー、テールランプもLEDです。ハザードランプを高速点滅させて急ブレーキを後続車に伝える、エマージェンシーストップシグナルが装備されています

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ヘッドライトはラウンド形状のLEDが採用されています。FRPで一体成形されたロケットカウルとともに懐かしいような、でもモダンであるような雰囲気を醸し出しています

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メーターには視認性の高い反転液晶が採用されています。速度と回転数のほか、4種類のライディングモードや6速のシフトポジションなど車両からの各情報を表示します。また、HAWK11はETC2.0車載器やトルクコントロールシステムを装備していますが、右側のインジケーターにはこれらの情報が表示されています

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ユニークな位置のバックミラーは、ハンドルではなく、ミラー&メーターステーに締結しています。使い勝手上困ることはありませんでした

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平面的面積が広い、美しくデザインされたタンクシュラウドが空や雲、樹々を映しています。燃料タンク容量は14ℓ。惜しむらくはもう少し容量が欲しかった…

 

タイプ・価格

・パールホークスアイブルー

・グラファイトブラック

メーカー希望小売価格:1,397,000円(消費税10%込み)

 

HAWK11主要諸元

通称名 HAWK 11
車名・型式 ホンダ・8BL-SC85
全長×全幅×全高 (mm) 2,190×710×1,160
軸距 (mm) 1,510
最低地上高 (mm)★ 200
シート高 (mm)★ 820
車両重量 (kg) 214
乗車定員 (人) 2
燃料消費率※1(km/L) 国土交通省届出値 33.5(60)<2名乗車時>
定地燃費値※2(km/h)
WMTCモード値★ 21.2(クラス3-2)<1名乗車時>
(クラス)※3
最小回転半径 (m) 3.4
エンジン型式・種類 SC84E・水冷 4ストローク
OHC(ユニカム)4バルブ 直列2気筒
総排気量 (cm3) 1,082
内径×行程 (mm) 92.0×81.4
圧縮比 ★ 10.1
最高出力 (kW[PS]/rpm) 75[102]/7,500
最大トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 104[10.6]/6,250
燃料供給装置形式 電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
始動方式 ★ セルフ式
点火装置形式 ★ フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 ★ 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量 (L) 14
クラッチ形式 ★ 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1 速 2.866
2 速 1.888
3 速 1.480
4 速 1.230
5 速 1.064
6 速 0.972
減速比 (1次★/2次) 1.717/2.470
キャスター角(度)★ 25°00´
トレール量(mm)★ 98
タイヤ 120/70ZR17M/C(58W)
180/55ZR17M/C(73W)
ブレーキ形式 油圧式ダブルディスク
油圧式ディスク
懸架方式 テレスコピック式(倒立サス)
スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式 セミダブルクレードル

■道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/本田技研工業株式会社

*1燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。ユーザーの使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
*2定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
*3WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。

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HAWK11のロゴ。デザインされた専用フォント「HAWK」の文字センターをレッドの罫線が貫いています

製品詳細:https://www.honda.co.jp/HAWK11/

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