CBR1000RR-R FIREBLADE SP、髙橋裕紀、ツーリングインプレッション

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レーシングライダーの髙橋裕紀さんが、CBR1000RR-R FIREBLADE SPで信州のワインディングロードをツーリングしました。“サーキットベスト”という目標をかかげて開発されたCBR1000RR-Rですが、ツーリングではどんな表情を見せるのでしょうか? インプレッションや乗りこなし方、さらには安全に早くコーナーを抜けるテクニックなどもお聞きします。

平均標高1,400m、早朝のビーナスラインの気温は10°以下です。髙橋さんもツーリンググローブの指先が「少し冷たい」と感じています。試乗の条件はよいとは言えませんでした。

 CBR1000RR-Rでワインディングロードを走行した感想をお聞かせください?

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髙橋裕紀「前回はサーキット走行でハイスピードでしたけれど(※1)、今回は路面もウェットが残るところで、(インプレッションがうまく取れるか)どうかなというところから走り始めまして…、感じたことはサーキット走行時と同じで、いい『接地感』でした。フロントタイヤの接地感が安心をもたらします。悪条件で、さらに『低速でも感じられる』んだなということが第一印象でした。ウイングなどがサポートしてくれているのかもしれません」

※1 Web Magazine Tractions内「早いだけでなく、安全面の装備充実で乗りやすい」(髙橋裕紀)ホンダCBR1000RR-R、サーキット全開走行インプレッション記事をご参照ください。

そしてすぐに、髙橋さんは曲がりやすさに驚くことになります。

 髙橋「一つ目のヘアピンに入った時に、サーキットではそこまで感じなかったんですが、ハンドルがスーっと内側に切れこんでいって曲がりやすかった。むしろ自分が、そんなにいっちゃって大丈夫なの? というぐらいバイクに曲がろうとする力がありまして、そこらへんにビックリしましたね」

 ワインディングロードのコーナーを気持ちよく抜けているように見受けられました。走っている最中、どんなことを試されていたのですか?

 髙橋「最初はMODE(モード)1という一番ハイパワーモードで走っていまして、路面状況が変わってウェットになった時にモードチェンジしてみようかなと思って、MODE 2、MODE 3と変えてみました。

やっぱりそこはサーキットと一緒で、” 1 ”と” 2 ”はどちらかというと近いイメージで、” 3 ”が、雨用モードということではないのですが、一気にぐっと変化を感じました。今日は気温も低くてウェットという中ではMODE 3がすごく乗りやすかったですね。

かと言って“ 1 ”が危ないかというとそうではなくて、エンジンの吹け方が軽くなるという感じで、“ 3 ”だとしっとりして、常に路面をタイヤが食っている感じがして、それが安心感につながりました。

1速で6,000rpm回すとスピードが60km/hを超えていってしまうので、それ以上は回せはしないんですが、その中でもMODE 1、2、3の違いをハッキリと感じました」

CBR1000RR-R FIREBLADEに搭載されている制御装置は、様々な走行シチュエーションに応じ、パワー“P”、エンジンブレーキ“EB”、 HSTC(Hondaセレクタブルトルクコントロール) “T”、ウイリー挙動緩和制御“W”など個別のレベル設定が可能です。さらにSPでは電子制御サスペンション“S”の制御レベルも加え、一括切り替え可能なライディングモードが搭載されています。今回のワインディングロード試乗では標準設定されているMODE 1、2、3を使用しました。

 サーキットとはスピード域や使用する回転域が低いワインディングロードでもCBR1000RR-Rは楽しめましたか?

髙橋「そうですね、やはりスピードを求めてしまったら楽しめないと思うんですけど、それ以外で十分楽しめます。電子制御されたクイックシフターがかなり良くなっていますので、1速でしたら1,000rpmで走れてしまうんですけど、あえて2速、3速に上げて加速感を味わったり、あとシフトダウンですね、こちらもクラッチ操作無しでシフトペダルを踏むだけでブリッピングしてシフトダウンをしてくれるので、本来のツーリングでしたらギアを変えないでずっと走っているところを、無駄に変えたくなってしまうという遊び心をかき立てられます。それがすごく楽しかったですね」

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CBR1000RR-R FIREBLADE SPはより素早いシフトチェンジを可能にしたクイックシフターを装備しています。シフトロッドに配置されたストロークセンサーが、シフトペダルの操作荷重を信号に変換。ECUが持っている車速、エンジン加減速状態、ギアポジションの情報と合わせることで、燃料噴射の停止タイミング、スロットルバルブ開度、点火時期を制御し、ミッションギアの駆動荷重を抜くことでシフトを実行。また自然なシフトフィールとすることで、違和感のない自然で上質な操作感を実現しています。また、シフトペダルにかかる踏力に応じた制御タイミングを、シフトアップ/ダウンとも3段階ずつ調整可能としています。

髙橋「あとは、このバイク、サーキット走行に合わせているということで、ライディングポジションが従来のバイクよりもキツ目になっています。そこで僕が一番思ったのはツーリングの時に、このポジションでずっと走って疲れないのだろうか? ということです。でも、すごくタンクがちっちゃくなっていますので前に座ると腰が丸くならずに背筋がいい状態に保てて、で、腕でしっかり抑えてあげると腰に負担も思ったほどこなかったので、僕の身長でこれですから、大概の方はいけるんだなあと、僕が思っていたキツさは無かったですね」

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このバイクを手に入れたユーザーが、ツーリングやワインディングロードでどう乗ればより楽しめるか、アドバイスをお願いします。

 髙橋「ワインディングロードですとコーナリングが大事になってくるので、下半身でしっかり抑えて、バイクの中心に乗ってください。CBR1000RR-Rは前後のバランスもいいですし、さらにバイクが大きくなっていることによって、ちっちゃい船から大船に乗り換えたような安定感があります。SP車なら、前後の電子サスペンションも、しっかりとした位置に乗るとさらに効果を発揮し楽に乗ることができます。そして、加速感が欲しければ1速のままアクセルを開けていったりだとか、1速だと走りがギクシャクしてしまう方は、2速、3速にアップしても楽しめます。

あとはABS。今日は結構滑りやすい路面でしたが、フロントブレーキをギュッとかけてみました。ABSを効かそうとしてしっかり握っていますので、恐らく効いているとは思うのですが、それを感じさせないほどでした。コーナーにオーバースピードで突っ込んでしまってはダメですけど、法定速度内でのギュッというブレーキでは、怖さをまったく感じませんでした。安心感を持ってかけることができます」

 撮影の最中に何度もUターンしていただきました。極低速での取り回しはいかがだったでしょうか?

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髙橋「サーキット走行をしていて一番苦手なのがピット内での取り回しだったり、Uターンです。街中だと信号待ちとか、そういう条件の時が一番嫌いなんですけど、CBR1000RR-Rはスポーツタイプにしてはハンドルもすごく切れますし、今回のように下が砂利道のUターンとなると、いつもだったら大事をとって降りてバックするんですけど、意外とそれをしなくてもUターンが出来ました。低速でのUターンが苦手でしたが、おそらくバイクに助けられているんでしょうけど、僕が上手になったのかな? という錯覚をおこすほどでした」

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CBR1000RR-R FIREBLADE、CBR1000RR-R FIREBLADE SPともに主要サイズ、重量は以下のとおりです。 全長:2100mm、全幅:745mm、全高:1,140mm、軸距:1,455mm、最低地上高:115mm、シート高:830mm、車両重量:201kg (全主要諸元は文末に掲載しています。こちらもご参照ください)

 髙橋さんはレーシングシーンで下りコーナリングが上手いという印象があります。CBR1000RR-Rで下りコーナーを安全に速く走るコツはありますか?

髙橋「先ほど走ったワインディングロードで、前傾姿勢で、さらに下りで、普段では味わえないぐらいウエイトが前にいってしまっているという状態を体験したんですけど、無意識的に僕がしたのは、フロントブレーキよりもリアブレーキを強く踏んで、なるべくつんのめらないようにすることでした。

このバイクは前後のブレーキが連動していますので、フロントブレーキだけかけてもリアもブレーキがかかるんです。でも、フロントブレーキかけての自動リアブレーキよりは、リアブレーキ強めのフロントブレーキちょっと触ってあげたほうが、荷重がフロントに乗り過ぎないイメージを受けたので、もしコーナー侵入時のブレーキング操作に余裕があればそういうところもやってあげると安定して走れることを実感できると思います。

また、リアブレーキをちょっと踏みながらアクセルを開けてあげてもバイクがグーっと沈んで安定するというワザもありますので、そういうところも使うと、安全に楽しめるのかなという気がします」

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 そういうときにタイヤのグリップ感はどこで感じるようにしていますか?

髙橋「そうですね、お尻の後ろで一番感じるのと、あとはハンドルです。タイヤが滑りそうになったらバイクは逆ハンぽくなってきます。ハンドルが内側に切れ込むような感じで、きれいに旋回していくようでしたらリアタイヤは滑っていないでしょう。そして、そこをより感じるためにニーグリップをしてください」

 ゆっくり走っている時も楽しそうに見えました。

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 髙橋「サーキットで今回のツーリングほどゆっくり走ることはありません。僕の中ではツーリングイコール攻めの姿勢にはならないので、その分いろいろなことをして楽しみました。バイクの形に合わせてマルク・マルケス選手のライディングフォームを真似してみようなど、実はゆっくり走っているのですが、ちょっと攻めていく風なカッコをしてみたりして、楽しかったですね」

インプレッションとアドバイス、ありがとうございました。最後にレースの話をお伺いします。髙橋さんは2020年から始まったMFJ全日本選手権ロードレースST1000クラスに、日本郵便HondaDream TP からCBR1000RR-Rで参戦し、第1戦、第3戦で優勝しています。今後の抱負をお聞かせください。

 髙橋「年間チャンピオン目指してしっかりと、最後までやりとげます。そして、願わくば新型CBR1000RR-Rの初年度を最高の形で締めくくりたいなと思っています」

本日は雨模様の中、どうもお疲れ様でした。

………………………

2020年11月1日に鈴鹿サーキットで開催された最終戦決勝レースで、髙橋さんは直前の走行で負傷した左手が思うように動かなかったためクラッチを切り切れず、予選3番手のポジションながらレッドシグナルが消える前に動いてしまいジャンプスタートと裁定されました。このためライドスルーペナルティーを受け、2周目には最後尾になりましたが、そこからの追い上げで最終的には16位でチェッカーを受けました。この順位で8ポイントを加算。これまでのレースで獲得したポイントとの合算で年間チャンピオンを獲得、見事公言どおりの締め括りを成しました。

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2020 MFJ全日本選手権ロードレース ST1000クラス 髙橋裕紀 戦績

第1戦 スポーツランドSUGO 優勝  (獲得ポイント25)
第2戦 岡山                                    台風のため中止
第3戦 オートポリス                    優勝 (獲得ポイント25)
第4戦 ツインリンクもてぎ        2位 (獲得ポイント22)
第5戦 鈴鹿サーキット                 16位 (獲得ポイント8)

CBR1000RR-R FIREBLADE 主要諸元
CBR1000RR-R FIREBLADE SP
読み シービーアール1000
アールアールアール
ファイアブレードエスピー
車名・型式 ホンダ・2BL-SC82
全長(mm) 2,100
全幅(mm) 745
全高(mm) 1,140
軸距(mm) 1,455
最低地上高(mm) 115
シート高(mm) 830
車両重量(kg) 201
乗車定員(人) 2
燃料消費率
(km/L)
国土交通省届出値: 21.0(60)〈2名乗車時〉
定地燃費値
(km/h)
WMTCモード値 16.0(クラス 3-2)〈1名乗車時〉
(クラス)
最小回転半径(m) 3.8
エンジン型式 SC82E
エンジン種類 水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒
総排気量(cm3 999
内径×行程(mm) 81.0×48.5
圧縮比 13.2
最高出力(kW [PS] /rpm) 160[218]/14,500
最大トルク(N・m [kgf・m] /rpm) 113[11.5]/12,500
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-DSFI)〉
使用燃料種類 無鉛プレミアムガソリン
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 16
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比 1速 2.615
2速 2.058
3速 1.7
4速 1.478
5速 1.333
6速 1.214
減速比(1次/2次) 1.630/2.500
キャスター角(度) 24゜00′
トレール量(mm) 102
タイヤ 120/70ZR17M/C(58W)
200/55ZR17M/C(78W)
ブレーキ形式 油圧式ダブルディスク
油圧式ディスク
懸架方式 テレスコピック式
(倒立サス/NPX Smart EC)
スイングアーム式
(プロリンク/TTX36 Smart EC)
フレーム形式 ダイヤモンド
カラー グランプリレッド
メーカー希望小売価格(消費税込み) 2,783,000円
(消費税抜本体価格 2,783,000円)
※SPと異なる諸元のみ掲載 CBR1000RR-R FIREBLADE
読み シービーアール1000
アールアールアール
ファイアブレード
懸架方式 テレスコピック式
(倒立サス/ビッグ・ピストン・
フォーク)
スイングアーム式
(プロリンク/バランス・フリー・
リアクッション・ライト)
カラー グランプリレッド
マットパールモリオンブラック
メーカー希望小売価格(消費税込み) 2,420,000円
(消費税抜本体価格 2,200,000円)

製品詳細 : https://www.honda.co.jp/CBR1000RRR/

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